住民意識調査と先行事例分析


低線量被曝のリスク認知、不確実性の取り扱い、及び心理的・社会的影響に関する市民の認識・理解度を把握するため、質問票を作成し、敦賀市を対象として訪問留置法※によって住民意識調査を実施しました。同時に、先行事例研究の文献も調査しました。

 

住民意識調査結果ならびに先行事例研究の調査結果を基に統計分析を行い、公衆の低線量リスク認知における阻害要因や課題を抽出しました。

 

     ※訪問留置法:調査員が対象者宅を訪問し、アンケート用紙を渡して記入依頼を行い、

            後日回収にうかがう手法


敦賀市民が「放射線や放射能」、「食品の安全」や「リスク」について、どのような意識を持っているかを調査する住民意識調査

調査対象   

(1) 母集団 敦賀市在住18歳以上の男女

(2)  標本数 300標本

(3)  抽出方法 割当法

  敦賀市にその人口属性に比例した確率を与えた地点(区域)を20点抽出。

  母集団の性・年齢の比率に応じた標本数を割り当て、各地点で15標本について調査。

調査方法 訪問留置法

調査時期 201395日(木)~919日(木)

調査項目

(1)  一般的な事柄について(4問)

(2)  放射線や放射能について(15問)

(3) 食品安全や「リスク」について(16問)

(4) 低線量の放射線被ばく影響について(13問)

  (2)~(4)5件法で質問

回答者属性

住民意識調査による敦賀市民の分析結果**

因子分析(クラスター分析)による敦賀市民の類型化

C1:不安層(24.0%

 リスク知識は中程度、強い不信感†と強い不安感‡、

 リスク判断基準の明示要求*は強い。

C2-2-2:中間1層(25.7%)【典型的中間層】

 リスク知識は中程度、不信感、不安感は中程度、

 リスク判断基準の明示要求は最も弱い。

C2-2-1:中間2層(16.0%)【無関心層】

 リスク知識は少ない、弱い不信感、不安感は中程度、

 リスク判断基準の明示要求は弱い。

C2-1-1:中間3層(19.3%)【非容認層】

 リスク知識は中程度、弱い不信感、不安感は中程度、

 リスク判断基準の明示要求は強い。

C2-1-2:容認層(15.0%

 リスク知識は多く、弱い不信感、弱い不安感、

 リスク判断基準の明示要求は弱い。

† 「不安感」は放射線/放射能に対するものを表す。

‡ 「不信感」は国/専門家に対するものを表す。

*「リスク判断基準」の明示要求は国/専門家に対するものを表す。

 

各層ごとの男女差と原子力従事該当者の有無による違いを見ると、C1(不安層)はやや女性が多く、C2-1-2(安心層)は男性が多い。C2-2-1(中間2層)は女性が多い。原子力従事該当者の有無では、C1(不安層)で「従事該当者無」がやや多く、C2-1-2(安心層)で「従事該当者有」が多い。

 

分析結果からの考察

因子分析とクラスター分析による回答者の分類から、C1(不安層)とC2-1-2(安心層)を対極とし、中間層として、C2-2-2C2-2-1C2-1-13層に類型化できることが示されました

 

敦賀市在住者の特徴の一つとして、放射線やリスクに対する知識はある程度有し、放射線に対する不安を冷静に受け止めようとする反面、低線量の放射線健康影響については心配する意識も示しています

 

国や専門家がリスク基準を示すことに対する要求は全体的に強く(43.3%、その強弱によってほぼ2分化されます

 

主成分分析から3つの指標が分類され、リスクを判断する方法を知っていると意識することが安心感に結びつく傾向があることが示されました

 

** 調査結果の詳細は、“敦賀市における放射線とリスクに関する意識調査,”篠田佳彦, 山野直樹, 日本原子力学会和文論文誌, 14[2], 95-112, 2015. をご覧ください。

 下記の J-stage からダウンロードできます(無料公開中)。


https://www.jstage.jst.go.jp/article/taesj/14/2/14_J14.018/_article/-char/ja/